税務署

今年も来ました、税務署からのお中元…そう、「一般取引資料せんヲ提出セヨ」とのお達しが。

お盆休みも挟んで何かと忙しい8月。提出期限は、その末日の8月31日。例年7月下旬頃に届く、ありがたくないお願いの手紙。

日常業務に追われる中、貴重な時間を決して少なくはない程度に割かれる作業。

1円の売上にもならない、会社にも評価されない、もっと言えば、取引先にある意味で迷惑がかかるかもしれない、面倒な資料作成の仕事。

聞いた話によると、各税務署にとっては資料せんの作成件数が多いことが評価の対象だとか。そのために、各事業者に対して提出を促す連絡を熱心によこしてくる、ということだそうな。

提出したところで、こちらは税制上の優遇が受けられるどころか、特に感謝されることもなく…いったい誰が、そんな作業を好き好んでやるというんですかね?

ま、やるんですけどね。長いものには巻かれるタイプなの。

“一般取引資料せん”とは

そもそも、経理事務員以外には聞きなれない単語であろう、この“一般取引資料せん”。というか、事務員にも別に馴染みはないんだけど、ある日いきなり送りつけられてくるんだからしょうがない。

この資料せん、何のために提出するものかというと…

税務署が欲しがるものですから、おそらく税務調査に必要な資料だということは想像がつきますよね。脱税や誤った納税などがないかを調べるための材料です。

もう少し詳しくお話ししましょう。

税務署から届いた依頼書には「売上、仕入、費用及びリベート等に関する資料の提出方の依頼について」とあります。

要するに「取引先から仕入をしたり、外注費や接待交際費を支払ったりした情報をまとめて提出してくれませんか?」ということです。

どこに対して/どんな費用を/いくら支払ったか

これを把握するための資料を求めているわけです。税務署が単独で情報を集めるには限界がありますから、こうして各事業所に作成を依頼してくるんですね。

資料せんの提出は義務ではない

機密文書

ポイントは、この資料せんの作成・提出は“法律に基づく義務ではない”ということです。税金の申告とはわけが違います。

あくまでも任意のものであり、税務署から事業者に対する「協力のお願い」ということ。ですから、依頼を無視して提出しなくても、当然罰則を受けるようなことはありません。

「協力しないことによって、なにか不利益はあるんじゃないか…たとえば、税務署からのチェックが厳しくなるとか…」

なんとなくそんな不安を感じてしまいますが、心配はご無用。一切関係ありません。少なくとも、建前上はそうなっています。信じましょう。

実際、依頼に対して応えたことがないという事業所も多いようです。逆に、一度提出すると翌年も依頼書が届くという話。

うちは毎年必ずとは限りませんが、2年に1回以上は届いている気がします。そして、その都度提出しています。

うちの会社(というか社長)が、あらゆるアンケートの類に答えていくスタイルなのもあるし、企業風土として、こういったものには以前から協力的な雰囲気なんですよね。

正直言って、中には「余計な仕事を…これ、やる意味ある?!」と思わずにはいられないものも多々ありますが…でもきっと、事務リーダーの善行を、お天道様は見てくれているから…

それはさておき、こうして集めた資料せんは、その後どのように使われるのでしょうか。

税務署が行う“反面調査”

税務署が行う税務調査。その手法の一つに「反面調査」というのがあります。

たとえば、脱税が疑われるアヤシイ会社があったとします。仮にA社としますね。

税務署は当然、A社に対して調査に入ることになります。担当職員は“質問検査権”という権限を持っていて、納税者であるA社は、その調査について答えなければいけない義務があります。

ただ、A社がその調査に対して明らかに嘘をついていたり、必要な資料を隠してしまったり…と、必ずしも調査に協力的ではないことも考えられます。

こうなると、税務署は疑わしい違法行為(脱税)が本当にあったのか、裏付けをとることができませんね。

そこで次なる手段として登場するのが、反面調査といわれる手法です。

汚れたお金

A社を通じてお金が動いている以上、かならずその相手方となる取引先が存在します。その取引先に対して、A社との取引内容を調べるために調査に入る。これが反面調査です。

反面調査を実施するにあたっては、税務署では様々な資料を事前に準備していきます。そのうちの一つが“一般取引資料せん”というわけです。

ここで一つ、取引の例を挙げて説明してみます。

参考:ひよこ商事とA社の取引

例えば、うち(仮にひよこ商事とします)とA社との取引について、それぞれの帳簿に次のような記載があったとします。

ひよこ商事の帳簿:A社から仕入れた材料代として200万円を支払い
A社の帳簿:ひよこ商事に250万円分の材料を納入、値引きして200万円を受け取り

そして、実際にはA社からひよこ商事に納入された材料は200万円分(つまり、ひよこ商事の帳簿が正しく記載されていた)としましょう。

A社は実際には200万円分しか材料を納入していないのに、250万円分納入したことにしています。差額の50万円は損失(赤字)として申告します。

こうして、実際には発生していない50万円の赤字によって利益を少なく見せ、納税額を少なく申告している、つまりは「脱税している」という判断になります。

A社の帳簿情報だけでは、このことはその場でわかりません。ひよこ商事から、事前にこの取引についての情報を得ていたから発覚したといえます。

わたしたち経理担当者がブツクサ言いながら作り上げた”資料せん”は、こうしてA社の不正を見抜くことに一役買うこともある、というお話でした。

チェック

ちなみに、調査員はどこから得た資料を基に調査しているということは決して明かしません。そんな事があったら大問題です。

というわけで、冒頭で言った“迷惑がかかる”ってのは、ちょっとニュアンスが違いますね。

取引先が正しく申告し、何もやましいことがないのなら、相手方が資料せんを提出したり、それを基に調査員が現れたとしても、何の問題もないことですからね。

ただし、誰だってできることなら納税額は少なく抑えたいもの。もちろん、虚偽の申告は許されることではありませんよ。

ですが、費用の名目を工夫したり、経費といえるかどうかギリギリのところを攻めて申告したり…と、どうにか少しでも多くの利益を認められるように申告するということは、商売人なら大なり小なり誰でも考えることです。

あるいは、脱税ということはないにせよ、正しく作成・提出していたつもりの申告書類を、調査によって大幅に修正せざるを得なくなった、ということだってあり得ます。

いずれにせよ、調査が入った時点で何らかの面倒がプラスされるという可能性の方が高いわけです。

そうした意味で、資料せんの作成にあまり協力的になれない、という経営者の考え方もわからないではありません。

公平

一方で、税務署がかかげる「適正・公平な課税実現のため」という意義も理解できます。

こうしたことから、資料せんの提出依頼に対しての結論は「協力できる範囲で協力する」というのが妥協点、現実的な落としどころじゃないかなと思います。

具体的には「ありのままを報告されても困らないであろう取引先についての資料のみ提出する」という対応になります。

任意だからといって冷たくスルーするのもなんだし、税務行政に対して理解がありますよ、協力的ですよ、という姿勢を見せる意味でも、堅そうな取引先についての資料を提出してみてはどうでしょう。

…こんなところで軟着陸してみましたが、どうですかね。どこにも波風立てたくないんや!

それにしてもねぇ…。さっきから黙って“資料せん”について語ってるけども…そもそも、資料せんの「せん」って何さ?

当たり前のように資料“せん”と表記してくれるな

国税庁のサイトでも当たり前のように「資料せん」って字面が並んでるけど、特に単語についての説明はなし。日常生活の中で“資料せん”なんて言葉、耳にする機会ありませんから!ナチュラルに使って流さないでほしいわ。ぷんぷん。

分かる範囲で調べると…

“せん”を漢字で書くと「箋」。付箋(ふせん)や便箋(びんせん)、処方箋(しょほうせん)の“せん”と同じ。意味としては“メモ”だとか”紙片”といったところですかね。

ですから、今回のテーマである一般取引資料せんは、本来“一般取引資料箋”と表記されるべきなのですが…

個人的に好きではない、「あっ旋」とか「石けん」のような、中途半端に漢字と平仮名の混じった表記。斡旋の“斡”や石鹸の“鹸”が常用外漢字なために、このような表記になるということなんですけれど。

熟語の一部あるいは全部が平仮名になるパターンだけじゃなく、他の字が当てられるケースもありますね。たとえば「抽籤(ちゅうせん)⇒抽選」、「遵守(じゅんしゅ)⇒順守」といったように。

資料せんも“箋”の字が常用外ということで、逆に一見してわかりづらい単語になっちゃってるんですよね。

個人的には“資料箋”と表記してほしいけど、この辺の線引きは難しいところです。読めるけど書けない、ってレベルの漢字ですから。“文書の最初だけ振り仮名付きで漢字表記”くらいが落としどころかと思いますが、どうでしょう。

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